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子どもと一緒に歩く、地域安全マップ作りから始まる「安全」なまちの発見

Tags: 地域安全, 子育て, 地域イベント, 防犯, 親子

日常の中にあった漠然とした不安

仕事と子育てに追われる日々の中で、地域のことになかなか目が向かないというのは正直なところです。通勤のために駅と家を往復し、週末は子どもの習い事や家族で過ごす時間にあてていると、地域で何が行われているのか、どんな人が暮らしているのかを知る機会は限られてきます。

それでも、子どもが成長し、一人で行動する機会が増えてくるにつれて、地域の安全について考えることが多くなりました。ニュースで見かける地域の事件や事故、子どもが通学路で怖い思いをしたという話を聞くと、漠然とした不安が頭をよぎります。地域の回覧板や学校からのお知らせで防犯関連の情報が回ってくることもありますが、忙しさにかまけてじっくり目を通せていないのが現状でした。

そんな時、地域の公民館で見かけた小さなポスターが目に留まりました。「親子で学ぼう! 地域安全マップ作り」とあります。親子で地域を歩き、危険な場所や安全な場所を確認しながらマップを作るという内容でした。子どもと一緒に地域の安全について具体的に考える機会になるかもしれない、そして、地域の活動に参加することで何か新しい発見があるかもしれない。そう考えて、小学生になったばかりの子どもと一緒に参加してみることにしました。

子どもの目で見る地域の姿

イベント当日は、複数の家族連れの他、地域の防犯ボランティアの方や警察官の方も参加されていました。まずは簡単な説明会があり、地域安全マップの目的や、地域を歩く上での注意点、子どもたちに「危険だな」「安心だな」と感じるポイントをどう伝えるかといったお話がありました。

その後、数組の親子がグループになり、地域の地図を片手に、実際にまちの中を歩いてみました。主催者の方が示してくれたのは、普段よく通る道や、子どもたちが遊びに行く公園の周辺など、私たち親子にも馴染みのあるエリアでした。

歩き始めてすぐに気づかされたのは、子どもの視点から見える「危険」や「安心」は、大人のそれとは異なる点があるということです。例えば、大人が何気なく通り過ぎるような細い路地や、建物の陰になっている場所でも、子どもは「ここ、見えにくくて怖いね」と感じたりします。逆に、開いているお店や交番、人通りが多い場所を「ここは大丈夫だね」と安心した様子で指さしたりもしました。

一緒に歩きながら、「どんな場所が危ないと思う?」「もし怖い人に声をかけられたらどうする?」といった会話をしました。いつもなら一方的に「気をつけなさい」と伝えるだけだった安全の話を、子ども自身の目で見た景色を通して具体的に話し合うことができたのは、大きな収穫でした。子ども自身も、ただ言われるだけでなく、自分で発見した危険箇所をマップに書き込むことで、安全についてより深く理解できたようでした。

地域との繋がりと、安心を育むということ

地域を歩いていると、地域の防犯ボランティアの方々が子どもたちに優しく声をかけ、安全な場所や危険な場所について分かりやすく説明してくださる姿がありました。また、地域の商店の方も、自分たちのお店が「子ども110番の家」になっていることや、地域の安全のために日頃から気を配っていることを話してくださいました。

これまで、地域の安全というのは「誰か」が守ってくれるもの、あるいは漠然と気をつけなければいけないもの、と考えていた節があります。しかし、このマップ作りを通じて、地域の安全は、このように多くの人がそれぞれの立場で関わり、意識し、協力し合うことで成り立っているのだと実感しました。

イベントの最後に、子どもたちが作った地域安全マップが集められました。それぞれのマップには、子どもたちの率直な視点から見た地域の危険と安心のポイントが色とりどりのペンで記されていました。それらのマップを見比べることで、地域全体として注意すべき点や、逆に地域のどこに助けを求められる場所があるのかが見えてきました。

今回の地域安全マップ作りへの参加は、私たち親子にとって、単に地域の危険な場所を知るというだけでなく、地域を違った視点で見つめ直し、地域の安全を支える人々の存在を知る貴重な機会となりました。忙しい日常の中でも、子どもと一緒に地域と関わる、無理のない一歩だったように思います。

地域の安全は、自分たちのこととして考え、小さなことからでも関わっていく意識を持つことが大切なのではないでしょうか。今回得られた気づきを大切に、これからも子どもと一緒に、地域の中で「安心」を育んでいきたいと考えています。