わたしたちの地域 多様な声

「時間がない」私が始めた地域貢献:子どもの居場所ボランティアで得たもの

Tags: 地域活動, ボランティア, 子育て支援, 居場所, 地域貢献

忙しい日々の中で感じていた、地域との距離感

私は39歳、会社員として働きながら小学生の子どもを育てています。朝から晩まで仕事と家事、育児に追われる毎日で、正直なところ、地域活動に関わる時間など全くないと感じていました。地域の回覧板や広報誌に目を通しても、イベントやボランティア募集の記事を見ても、「いいな、でも私には無理だろうな」と諦めてしまうことがほとんどでした。

地域に暮らす一員として、何か地域に貢献したい気持ちはありましたし、子どもたちが安全に過ごせる地域であってほしいという願いもありました。しかし、「地域活動=時間がかかるもの」という固定観念があり、なかなか一歩を踏み出せずにいたのです。

「短時間でもOK」の言葉に背中を押されて

そんな私が地域活動に関わるきっかけとなったのは、自治体の広報誌で見かけた小さな記事でした。それは、地域にある公民館などで開かれている「地域の子どもの居場所」で、子どもたちの宿題を見たり、一緒に遊んだりするボランティア募集のお知らせでした。特に私の目を引いたのは、「週に1回、1時間からでも参加できます」という一文でした。

「1時間なら、もしかしたら私にもできるかもしれない」。そう思い、半信半疑ながらも説明会に参加してみることにしました。説明会では、運営されている方々から活動の目的や内容、そして関わり方の柔軟さについて詳しいお話を伺うことができました。参加されているボランティアの方々も学生さんから高齢の方まで幅広く、それぞれのペースで関わっていることを知り、私の「時間がないから無理」という思い込みが少しずつほぐれていくのを感じました。

子どもたちの笑顔と多様な地域との出会い

実際にボランティアとして関わり始めてみると、新たな発見がたくさんありました。子どもたちは、学校や学年の垣根を越えて集まり、思い思いに過ごしています。宿題に真剣に取り組む子、友達と楽しそうにボードゲームをする子、静かに本を読む子。短い時間ではありますが、子どもたちの様々な表情に触れることができました。

私が担当したのは、主に宿題を見る時間でした。難しい問題に一緒に頭を悩ませたり、解けた時の嬉しそうな顔を見たりする中で、子どもたちが安心して過ごせる場所、ちょっと立ち寄れる場所が地域にあることの価値を実感しました。

また、この活動を通じて、他のボランティアの方々や、居場所の運営に携わる地域の方々とも交流が生まれました。普段の生活では接点のない方々との会話は、地域に対する私の視野を広げてくれました。「こんな活動もあるんだ」「この方はこんなことに情熱を持っているんだ」といった気づきは、地域というものをより多角的、立体的に捉えるきっかけとなりました。

限られた時間でもできること、そして得られたもの

週に1時間という、私にとって無理のない範囲での関わりでしたが、それでも地域の一員として、子どもたちの成長に関われているという実感は大きな喜びでした。最初は「時間がない」という思いばかりが先行していましたが、実際に関わってみると、大切なのは時間の長さだけではなく、どのような意識で地域と関わるかだということに気づかされました。

もちろん、時にはどのように子どもたちと関われば良いか悩むこともありました。しかし、運営の方に相談したり、他のボランティアの方の様子から学んだりしながら、自分なりのペースで関わっていくことができるようになりました。

この経験を通して、私は「時間がない」という言い訳を手放し、自分ができる小さな一歩を踏み出すことの大切さを学びました。そして、地域には多様なニーズがあり、それに応えようとする様々な活動があり、それぞれの人がそれぞれの形で地域と繋がっているのだということを肌で感じることができたのです。

小さな一歩が繋ぐ、地域の多様な声

地域との関わり方は一つではありません。大きなイベントを企画したり、長時間のボランティア活動に参加したりすることだけが地域貢献ではないということを、この経験は教えてくれました。私のように、仕事や子育てで忙しい方でも、地域には短い時間や特定のスキルを活かして関われる場所がきっとあるはずです。

地域の子どもの居場所での私の体験は、まさに「わたしたちの地域 多様な声」の一つだと感じています。それぞれの立場や状況は違えど、地域と関わりたいという思いを持つ人たちが、自分に合った方法で繋がり、それぞれの声を聞き、支え合うことで、地域はより豊かになっていくのではないでしょうか。もしあなたが「地域と関わりたいけれど、時間がない」と感じているなら、ぜひ地域の広報誌や自治体のウェブサイトなどを覗いてみてください。もしかしたら、あなたにできる「週に1時間」が見つかるかもしれません。