いつもの回覧板から始まった、無理なく続けられる地域との関わり
日々の忙しさの中で見過ごしていたもの
共働きで子育てをしていると、あっという間に一日が過ぎていきます。仕事、保育園や学校の送り迎え、家事育児。時間に追われる中で、地域との関わりは二の次になりがちでした。地域のイベントのお知らせは回覧板や学校からの配布物で目にしますが、「参加したい気持ちはあるけれど、時間がない」「自分には関係ないかな」と、どこか遠い世界の出来事のように感じていました。
回覧板は丁寧に見てはいるつもりでしたが、それはあくまで情報として「知る」ためでした。「〇〇祭り」「防災訓練」「清掃活動」といった文字が並んでいても、そこから一歩踏み出して参加する、という発想はなかなかありませんでした。地域に住んではいますが、住民として主体的に関わる、という意識は薄かったように思います。
回覧板の小さな文字に背中を押されて
そんなある日、いつもの回覧板に挟まっていた一枚のお知らせが目に留まりました。地域の自治会が企画した「河川敷クリーンアップ活動」の案内です。「どなたでも参加できます」「短時間でも歓迎」「お子さん連れもどうぞ」という文字が目に入りました。
これなら、もしかしたらできるかもしれない。そう感じたのです。大がかりな準備は不要で、時間も1時間程度とのこと。土曜日の午前中であれば、家族で参加することもできそうです。地域の役に立ちたいという気持ちは漠かに持っていましたが、日々の忙しさの中で諦めていました。このお知らせは、そんな私にとって、地域との関わりへの小さな入口のように思えました。
参加を決め、子どもと一緒に当日集合場所へ向かいました。普段何気なく利用している河川敷には、すでにたくさんの人が集まっていました。高齢の方々、私たちと同じくらいの子育て世代、学生さんらしき若い人たち。本当に多様な顔ぶれでした。
短時間でも得られた大きな実感
受付を済ませ、軍手とゴミ袋を受け取り、早速清掃開始です。子どもは最初は戸惑っていましたが、他の参加者が楽しそうにゴミを拾う様子を見て、すぐに慣れて積極的に参加し始めました。普段の遊びとは違う、地域をきれいにする、という活動に特別な意味を感じているようでした。
短い時間でしたが、夢中で活動しました。思っていた以上にたくさんのゴミが集まりました。タバコの吸い殻、空き缶、プラスチック片。きれいにすることで、河川敷が見違えるように明るくなったように感じました。
活動中、他の参加者の方と簡単な挨拶や言葉を交わす機会がありました。「お子さん、頑張ってるね」「今日は良い天気で良かったね」といった些細な会話ですが、それが心地良く感じられました。回覧板で名前だけは知っていた自治会役員の方ともお話しすることができ、地域活動について少しだけお話を伺うこともできました。
1時間の活動を終え、清掃後のきれいになった河川敷を眺めた時、大きな達成感がありました。そして、これは私たち家族だけではなく、今日ここに集まった多くの人たちの力で成し遂げられたことなのだ、と強く感じました。
地域との関わりは、もっと多様で良い
この体験を通じて、地域との関わり方は一つではないのだと気づきました。これまでは「地域活動=自治会の役員になる」「大きなイベントの企画・運営に関わる」といった、まとまった時間や労力が必要なものをイメージしていました。しかし、今回の清掃活動のように、短時間で、無理のない範囲で参加できる活動もたくさんあります。
また、必ずしも活動に参加することだけが地域との関わりではありません。地域の情報に意識を向けること、回覧板を丁寧に読むこと、地域のお店を利用すること、そして、すれ違う地域の方々と挨拶を交わすこと。そういった日々の小さな積み重ねも、立派な地域とのつながりなのだと思います。
今回の経験をきっかけに、私は回覧板や自治体からのお知らせを以前より意識して見るようになりました。地域のイベントに短時間だけ顔を出してみたり、地域の安全に関する情報をチェックしたりするようになりました。子どもが学校や保育園で地域のことを学んできた時に、一緒に話をするきっかけにもなっています。
子育てや仕事に追われる日々は変わりませんが、回覧板から始まった小さな一歩が、私の地域への見方を変え、無理なく地域と関わっていくことの楽しさや価値を教えてくれました。地域との小さなつながりが、もしかしたら子育てをしていく上での安心感にもつながっていくのかもしれない、と感じています。
日々の生活の中に、地域との関わりのヒントは意外とたくさん隠れているのかもしれません。あなたも、いつもの回覧板や地域の情報に少しだけ意識を向けてみませんか。