子どもと一緒に参加した地域の防災訓練で気づいたこと
きっかけは一枚の回覧板
日々の生活は、朝の準備から始まり、子どもを保育園へ送り届け、会社での仕事、そして慌ただしい夕食準備と寝かしつけへと続きます。目まぐるしく過ぎる日々の中で、地域の情報にゆっくり目を通す時間はなかなか取れませんでした。回覧板も、急いで次のご家庭へ回すことがほとんどでした。
そんなある日、たまたま回覧板で目にしたのが、「地域の防災訓練」の案内でした。数年前に大きな災害が起きたニュースを見て、漠然とした不安を感じたことを思い出しました。子どもがいる今、「もしも」の時にどうすれば良いのか、具体的なイメージが全くありませんでした。
訓練は週末の午前中に開催されるとのこと。正直なところ、貴重な週末の時間を割くことへのためらいもありました。しかし、「子どもと一緒に参加できます」という一文に目が留まりました。子どもも大きくなり、地域のイベントに興味を持つようになった頃でしたので、「良い経験になるかもしれない」と思い、参加を決めてみることにしました。
子どもの好奇心と、大人の真剣な学び
当日の朝は、少し早起きをして会場である近くの小学校へ向かいました。すでに多くの地域住民の方々が集まっておられました。私たち親子のような子育て世代の方々だけでなく、高齢の方、学生さんなど、本当に様々な世代の方がいらっしゃいました。
訓練はいくつかのブースに分かれて行われていました。消火器の使い方を学ぶコーナー、応急処置の方法を教わるコーナー、そして非常食の試食コーナーなどです。
子どもが特に熱心に参加したのは、煙からの避難体験でした。訓練用のテントの中が煙で充満しており、姿勢を低くして進む方法を学びました。怖がるかと思いましたが、真剣な表情で係の方の説明を聞き、一つ一つ指示通りに体験していました。
私は、非常時のトイレの組み立て方や、給水バッグの使い方といった、まさに「生活」に直結する情報が大変参考になりました。専門の方の説明は非常に分かりやすく、実際に手を動かしてみることで、いざという時に慌てず行動するための具体的なイメージを持つことができました。
また、応急処置のコーナーでは、止血の方法などを学びました。学校の先生や消防団の方々が、実演を交えながら丁寧に教えてくださり、参加者からの質問にも一つ一つ答えておられました。皆さんの地域への貢献の姿勢に感銘を受けました。
訓練で見えた地域の「顔」と「力」
訓練に参加して最も強く感じたのは、地域の多様な人々がそれぞれの立場で安全を守ろうと協力している姿でした。自主防災組織の方々が訓練全体を運営し、消防団の方々が専門的な知識を教えてくださり、町内会の方々が会場設営や誘導を担っておられました。
参加者同士でも、自然な交流が生まれていました。非常食の試食コーナーで、「これ、意外と美味しいですね!」と隣にいたご夫婦と話したり、子どもが訓練に参加している様子を見て、高齢の女性が優しく声をかけてくださったりしました。普段、挨拶を交わす程度だった地域の方と、顔と名前を覚えるきっかけにもなりました。
これまでは、地域に住んでいる人たちが、いざという時にどう協力するのか、全く想像ができませんでした。しかし、この訓練を通じて、地域にはこれだけ多くの人がいて、それぞれが地域の一員として関心を持ち、支え合おうとしていることを実感することができました。
参加することの価値
防災訓練への参加は、正直、事前の想像よりもはるかに有益な時間でした。単に防災知識を学ぶだけでなく、子どもの学びの機会となり、そして何よりも地域の「顔」が見え、地域とのつながりを感じることができたからです。
子育てや仕事に追われる中で、地域活動への参加はハードルが高いと感じていました。しかし、今回の防災訓練のように、子どもと一緒に無理なく参加できる形で、しかも私たちの暮らしの安全に直結する活動があることを知りました。
地域との関わり方は一つではありません。回覧板を見て少し立ち止まってみる、地域のイベントに子どもと顔を出してみる、そうした小さな一歩が、地域での暮らしをより安心できるものにし、多様な人々とつながるきっかけになるのだと感じています。
来年の防災訓練も、ぜひ子どもと一緒に参加したいと思っています。そして、今回見えた地域の「顔」や「力」を、大切にしていきたいと考えています。