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地域で始まった「ながら見守り」活動、子育て世代の私が無理なく参加できた理由

Tags: 地域活動, 見守り活動, 子育て, 安全, 地域交流

日常の風景に溶け込む「ながら見守り」

朝の通勤時間や、夕方の買い物帰り。地域の通りを歩いていると、黄色い腕章やプレートをつけた方々が、子どもたちの登下校を見守っている姿を目にすることがあります。そういった活動は、地域の子どもたちの安全を守る上で大変ありがたい存在だと感じていました。一方で、仕事や子育てに追われる日々の中で、「自分には時間を割いて活動に参加するのは難しいだろうか」という気持ちも同時に抱いていました。

そんな中、地域の掲示板で見かけたのが「ながら見守り」という取り組みの紹介でした。これは、特別な時間を作るのではなく、通勤や犬の散歩、買い物といった日々の生活動線の中で、意識的に子どもたちに挨拶をしたり、危険な場所に気を配ったりするというものです。腕章や専用のグッズも配布され、参加していることが周囲にも伝わるような仕組みになっていました。

小さなきっかけ、大きな安心感へ

正直なところ、最初は「本当にこんなに手軽で良いのだろうか」と半信半疑な部分もありました。しかし、「まずはできる範囲で参加してみませんか」という呼びかけに背中を押され、専用のプレートをカバンにつけてみることから始めました。

実際に始めてみると、それは想像していた以上に無理のない、自然な活動でした。いつもの道を歩きながら、すれ違う子どもたちに軽く会釈をしたり、「いってらっしゃい」「おかえりなさい」と声をかけるだけです。最初は戸惑っていた子どもたちも、毎日顔を合わせるうちに笑顔で挨拶を返してくれるようになりました。

活動を続ける中で気づいたのは、子どもたちの顔や普段の様子が少しずつわかるようになってきたことです。また、他の「ながら見守り」に参加している地域の方々とも、自然と挨拶を交わす機会が増えました。特別な会話をするわけではありませんが、「みんなでこの地域の子どもたちを見守っているんだな」というゆるやかな連帯感のようなものを感じました。

忙しい日常の中に生まれる地域のつながり

子育てと仕事に追われる日々の中では、地域行事への参加や、まとまった時間の必要なボランティア活動になかなか踏み出せないと感じていました。しかし、この「ながら見守り」は、既存の生活パターンを変えることなく参加できます。例えば、仕事への行き帰りに少しだけ早く家を出て、通学路を意識して歩く。買い物のルートを選ぶ際に、子どもたちの下校時間帯を意識してみる。そういった、ほんの小さな意識の変化と行動の積み重ねで成り立っています。

もちろん、すべての子どもたちを見守ることは難しいかもしれませんし、何か突発的な事態に遭遇する可能性もゼロではありません。しかし、一人ひとりが「ながら」で意識するだけでも、地域のどこかで子どもたちを見守る「目」が増えることになります。そして、その「目」が複数になることで、地域全体の防犯力が高まることにもつながるのではないかと感じています。

この活動を通じて、地域との関わり方は一つではないことを改めて実感しました。時間がないから、特別なスキルがないからと諦めるのではなく、自分ができる範囲で、日常の延長線上で参加できる活動があるという発見は、私にとって大きな希望でした。

地域の安全は、誰か特定の人が担うものではなく、そこに暮らす一人ひとりの小さな意識と行動の積み重ねによって守られていくものだと感じています。「ながら見守り」は、まさにその積み重ねの一つであり、忙しい子育て世代でも無理なく地域に貢献し、地域とのつながりを感じられる素晴らしい機会だと考えています。