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地域情報誌編集ボランティアの体験談:届けたい情報と受け取りたい想い

Tags: 地域活動, ボランティア, 情報発信, 地域交流

地域情報を求める中で見つけた、編集ボランティアという選択肢

日々の仕事と子育てに追われる中で、地域の情報になかなか触れる機会がないと感じていました。子どもと一緒に楽しめるイベントはないか、地域の安全に関する取り組みはどうなっているのか。知りたいことはたくさんあるのに、限られた時間の中で情報を探し出すのは容易ではありませんでした。自治体からの配布物や回覧板、保育園や学校からのお知らせ、そしてママ友・パパ友からの口コミが主な情報源でしたが、もっと網羅的に、多様な地域の活動を知ることはできないかと考えていました。

そんな折、地域の情報発信に関わるボランティア活動があることを知りました。それは、数ヶ月に一度発行される手作りの地域情報誌の編集に携わる機会でした。これまで情報を受け取る側だった自分が、発信する側に回ることで、何か新しい発見があるのではないか、そしてそれが少しでも地域への貢献につながるのではないかという期待から、思い切って参加してみることにしました。

情報の「源泉」に触れる喜びと難しさ

編集ボランティアの活動は多岐にわたります。まずは、どんな情報や活動を取り上げるかの企画会議。地域のイベント、活動している団体、お店の紹介、歴史や自然に関する情報など、様々なアイデアが出されます。ここで、自分が普段「こんな情報が知りたいな」と感じていた視点を提案してみることもありました。特に、子育て世代が楽しめるイベントや、子どもの学びにつながるような地域の取り組みには自然と関心が向きました。

企画が決まると、次は取材や記事執筆です。地域の農家さんにお話を伺ったり、NPOの活動現場を訪ねたり、地元の伝統工芸に関わる職人さんに会ったり。普段の生活ではなかなか出会えないような方々のお話を直接聞けるのは、大きな喜びでした。皆さん、それぞれ熱い想いを持って地域で活動されており、そのエネルギーに触れるたびに、この地域にはこんなにも多様な魅力があるのかと改めて気づかされました。

一方で、取材の調整や、聞いた話を分かりやすく、かつ魅力的な記事にする難しさも感じました。特に、専門的な内容を平易な言葉で伝えること、限られた紙面の中で伝えたいことをまとめることには苦労しました。しかし、他のボランティアメンバーと協力し、時には文章のプロのアドバイスをいただきながら、少しずつ形にしていく過程は大きな学びでした。

届けた情報が、誰かの「知りたい」に応える瞬間

記事の校正作業を経て、情報誌が完成した時の達成感は格別です。自分たちが企画し、取材し、形にしたものが、地域住民の手に渡る。想像するだけで胸が熱くなりました。

配布作業もボランティアメンバーで行います。自宅近くの地域を担当し、一軒一軒ポストに投函したり、地域の交流スペースや店舗に置かせてもらったり。配布中に近所の方に「いつも楽しみにしているよ」「この前の記事、すごく面白かった」と声をかけていただけることがあり、それが何よりの励みになりました。特に、「子ども向けのイベント情報、いつも助かっています」という声を聞いた時には、自分が情報収集で苦労した経験が、同じように困っている誰かの役に立てたのだと感じ、活動の意義を強く実感しました。

もちろん、全てが順調なわけではありません。本業や子育ての合間を縫って活動時間を確保すること、取材を受けてくださる方を見つけること、常に新しい情報を探すことなど、大変だと感じる場面もあります。また、情報誌が全ての住民に届いているわけではない、特定の層には読まれにくいといった課題も感じています。しかし、こうした課題があるからこそ、どのようにすればもっと多くの方に情報を届けられるのか、どんな情報が求められているのかを、メンバーと話し合いながら常に考える機会になっています。

情報を通じて見えてきた、多様な地域とのつながり方

この地域情報誌の編集ボランティアとして活動した経験を通じて、地域との関わり方は多様であることを改めて感じています。何か大きなことを成し遂げなくても、自分が持っている視点やスキル(文章を書くこと、人と話すこと、情報を整理することなど)を活かして、無理のない範囲で地域に貢献できること。そして、情報を受け取る側だけでなく、発信する側になることで、地域の知られざる魅力や、そこに暮らす人々の想いに触れることができること。

地域情報誌は、単に情報を伝えるだけでなく、作り手と読み手、そして取材を通じて出会う様々な地域の人々をゆるやかに繋ぐ役割を担っているのだと感じています。「知りたい」という想いから始まった私の地域との関わりは、今、情報を「届けたい」という想いを乗せた活動へと広がっています。これからも、この小さな情報誌を通じて、地域の多様な声と、それを受け取る人々の想いを繋いでいきたいと考えています。