地域の神社のお祭り準備に参加して見えた、世代を超えた地域の力
毎年楽しみにしていたお祭り、その「裏側」への一歩
私たちの地域では、毎年秋に地域の大きな神社の例大祭が行われます。子どもの頃から当たり前のように参加し、大人になってからも子どもたちと賑わいを楽しむ大切な行事でした。色とりどりの出店、活気あふれる神輿、夜空を彩る奉納花火。それはいつも、準備が整えられた「完成されたお祭り」の姿でした。
その「裏側」に、自分たちが関わることなど考えたこともありませんでした。地域活動というと、時間のある人がするもの、特別なスキルがある人がするもの、という漠然としたイメージがあったからです。しかし、ある年の春、回覧板に挟まれていた一枚のお知らせに目が留まりました。「お祭り準備にご協力いただける方を募集します」。子どもも少し大きくなり、以前よりは少しだけ時間に余裕ができた頃でした。「子どもにも、お祭りを見るだけでなく、地域の人たちが力を合わせて何かを作り上げる過程を見せてあげたい」という気持ちが湧き上がり、恐る恐る連絡してみることにしました。
初めての祭り準備、広がる地域の輪
初めて参加したのは、お祭り当日の数週間前に行われた、境内の簡単な清掃と備品の確認作業でした。指定された時間に行ってみると、そこには想像していた以上にたくさんの人が集まっていました。長年この地域に住んでいる高齢の方々、私と同世代と思しき子育て中の方々、そして若い世代の方々の姿もありました。皆さんの顔には、地域のために一汗かこうという明るい意欲が感じられました。
最初は勝手が分からず、どう動けば良いのか戸惑っていると、「あちらで掃き掃除をお願いできますか」「この備品を運ぶのを手伝ってくれると助かります」と、古くから準備に関わっている方が優しく声をかけてくださいました。子どもは最初は少し緊張していましたが、一緒に参加していた他の子たちとすぐに打ち解け、落ち葉集めを手伝ったり、運ばれてくるものを数えたりと、子どもなりに楽しそうに作業に関わっていました。地域の方が子どもにも「お手伝い偉いね」「ありがとう」と声をかけてくださり、子どもも嬉しそうでした。
世代を超えて受け継がれる知恵と力
準備を進める中で特に印象深かったのは、世代を超えた連携でした。長年祭りに関わっているベテランの方々は、祭りの歴史や慣習、効率的な作業の進め方などを熟知しており、的確な指示やアドバイスをしてくださいます。若い世代の方々は、力仕事や高い場所での作業など、体力が必要な場面で活躍していました。私たち子育て世代は、短い時間でもできる作業を見つけて参加したり、子どもたちが安全に過ごせるように気を配ったりと、それぞれの立場で貢献していました。
ある時、提灯の飾り付けについて相談している場面に出くわしました。高齢の男性が「昔はこうやって結んでいたんだよ」と手本を見せると、若い男性が「それなら、この道具を使えばもっと簡単にできますね」とスマートフォンの動画を見せながら新しい方法を提案していました。昔ながらの知恵と新しい技術が組み合わされる様子を見て、地域の力がこういう形で受け継がれ、進化していくのだと感じました。それぞれの世代が持つ経験やスキルが合わさることで、祭りという大きな行事が成り立っていることを実感しました。
小さな一歩から見えた、地域の多様な顔
祭り準備に参加する前は、「知り合いがいないから参加しにくいかも」「子どもを連れて行ったら迷惑にならないか」といった不安がありました。しかし、実際に参加してみると、皆さんとても温かく迎えてくださり、初対面でも自然と会話が生まれました。「お子さん、もうこんなに大きくなったのね」「うちも同じくらいの孫がいるのよ」など、短い時間の作業の中にも、地域の人々とのゆるやかな繋がりが生まれる瞬間がありました。
無理なく、できる範囲で関わらせていただいた祭り準備。それは、完成したお祭りを楽しむのとはまた違う、地域との深いつながりを感じられる体験でした。地域には、普段はあまり見えなくても、お祭りという一つの目標に向かって力を合わせる多様な人々がいること。そして、たとえ短い時間でも、自分にできることで地域に貢献できる場所があることを知りました。
子どもも、自分がお手伝いした提灯の下を歩いたり、一緒に作業した地域の人たちに会ったりすることで、お祭りへの特別な愛着を持ったようです。地域活動への参加は、特別なことではなく、日々の暮らしの中の小さな一歩から始まるのだと実感しています。地域のお祭り準備は、私たちの地域に根付く温かさと、世代を超えて受け継がれる確かな力を教えてくれました。