地域の子ども食堂に一歩踏み出してみて見えた、多様な地域のつながり
地域の子ども食堂、気になっていたけれど
子育てと仕事に追われる日々の中で、地域の情報に触れる機会は限られていました。回覧板や学校からのお知らせは目を通すものの、それ以上の新しい情報に出会うことは多くありませんでした。そんな中、以前から耳にしていたのが「地域の子ども食堂」の存在です。
子どもたちの居場所作りや食事の提供だけでなく、地域交流の場にもなっていると聞いて、漠然と「良い場所だな」「何か関われたら良いな」という気持ちはありました。しかし、活動内容が具体的に分からなかったことや、「ボランティア」と聞くとまとまった時間が必要なのではないか、という思い込みから、なかなか一歩を踏み出せずにいました。
小さな「きっかけ」から関わってみる
ある日、地域の情報サイトで、近所の子ども食堂が「調理補助や配膳を手伝ってくれる方を募集しています。短時間でも大丈夫です」という呼びかけをしているのを目にしました。「短時間でも」という言葉に後押しされ、まずは話だけでも聞いてみようと、思い切って連絡をしてみました。
担当の方にお話を伺うと、活動は週に一度、夕食を提供する日があり、その日の準備から片付けまでを、関われる人が関われる時間だけ手伝うスタイルだということでした。特別なスキルは必要なく、野菜を切る、食器を並べる、食後に片付ける、といった簡単な作業だけでも助かるとのこと。私の生活リズムであれば、夕食準備の少し前の1時間程度なら参加できるかもしれない、と感じました。子どもを連れて行っても良いか尋ねたところ、見守りが必要な場合は難しいが、お手伝いできる年齢であれば一緒に参加することも可能だと教えていただきました。幸い、子どもも少しずつお手伝いに興味を持ち始めた頃でしたので、親子で参加してみることにしました。
食堂で出会った多様な「顔」と「声」
初めて子ども食堂の活動に参加した日、少し緊張しながら会場である地域の集会所へ向かいました。そこには、すでに何人もの人が集まっていました。高齢の方々が手際よく野菜の下ごしらえをしていたり、若いお母さんたちが子どもを遊ばせながら準備を進めていたり、学生さんが宿題を教えながら待っていたり。想像していた以上に多様な顔ぶれが集まっていることに驚きました。
私は担当の方に教えていただきながら、簡単な調理補助と食器の準備をお手伝いしました。子どもも一緒に、食器を配るお手伝いをしました。慣れない作業でしたが、周りの方が優しく声をかけてくださり、安心して活動することができました。
子どもたちが集まってくると、会場は一気に賑やかになります。「おいしそう!」「これ何?」とキラキラした目で料理を覗き込む子どもたちの声、それを優しく受け止めるスタッフやボランティアの方々の温かい声。普段、仕事と家庭の往復で接する人が限られている私にとって、それは新鮮で、とても温かい光景でした。
食事の時間になると、子どもたちはもちろん、仕事帰りらしい方、一人暮らしの高齢の方など、様々な人が一緒に食卓を囲んでいました。特別な会話はなくとも、同じ場所で同じ食事を共にするというだけで、そこに穏やかな一体感が生まれているように感じられました。
見えてきた地域の新しい姿
初めて子ども食堂に関わってみて、多くの気づきがありました。一つは、短い時間でも地域の役に立てることがある、ということです。完璧にこなそうとか、全ての時間に関わろうとか気負う必要はなく、できることを、できる範囲で行えば良いのだと感じました。また、子どもと一緒に参加できたことは、地域活動へのハードルを下げてくれただけでなく、子どもにとっても地域の色々な大人と触れ合う良い機会になったようです。
そして何より強く感じたのは、子ども食堂という場所が、地域の色々な立場の人々をつなぐハブになっているということです。そこには、普段の生活ではなかなか出会うことのない多様な人々が自然と集まり、緩やかなつながりを作っていました。子どものため、地域のため、という共通の思いを持った人々が、それぞれの形で関わり、一つの場所を支えている。その温かさと多様な関わりの形は、私が知らなかった地域の新しい一面を見せてくれました。
一歩踏み出すことから始まる地域のつながり
「地域活動」と聞くと、何か大きなことをしなければいけない、特別なスキルが必要なのではないか、と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、私の子ども食堂での体験は、そうではないことを教えてくれました。自分の生活の中で無理なくできる小さな一歩が、地域との新しいつながりを生み、知らなかった地域の多様な魅力に気づかせてくれることがあります。
もし、あなたも地域との関わりに興味があるけれど、どこから始めれば良いか分からないと感じているのであれば、まずは地域の情報に少しだけ目を向けてみることから始めてはいかがでしょうか。地域の掲示板、広報誌、ウェブサイト、そして身近なママ友やパパ友との会話の中に、あなたが地域とつながるための小さな「きっかけ」が隠されているかもしれません。そして、もし子ども食堂のような場所が近くにあれば、ぜひ一度、どんな場所なのか覗いてみることをお勧めします。きっと、温かい出会いと、無理なく関われる多様な形が見つかるはずです。